キミの笑顔が見たいだけ。
消えそうな顔……。
そう言えば、前に言われたっけ。
「俺の前ではムリに笑わなくていいから」
「…………」
そう言われて、顔に入れていた力がスーッと抜けていく感じがした。
ムリに笑わなくてもいい。
よっぽどひどい顔をしてるのかな。
自分ではよくわからないけど、そうなんだろう。
「矢沢君は……自分の命があと半年しかないって知ったら、どうする?」
突き付けたのは、突拍子のない質問。
答えられるわけがないとわかっていながらも、聞いてみたくなった。
「は?」
矢沢君は一瞬キョトンとしたあと、目を瞬かせて訝しげに首を傾げた。
そりゃそうだ、ごもっともな反応。
これが普通。
だって高校生で自分が死ぬなんて、考えるわけないよね。
「もしもの話。あと半年しか生きられないって知ったら、どうする?」
「んなこといきなり言われてもなぁ」
そう言いながら、矢沢君は視線を宙に彷徨わせた。
だよね。
あたしだってそう思った。
信じられなかった。
できればまちがいであってほしいって、強く願った。
でもまちがいなんかじゃなくて、それが現実だった。
ツラくて苦しくて、正直今も全然受け入れられていない。
放射線治療だって頑張って来たけど、最近じゃ効果がみられなくなった。
このまま……このままあたしは。
そう考えたらとてつもなく怖くて、逃げ出してしまいたくなる。
どこかに逃げたい。
……消えたい。