キミの笑顔が見たいだけ。
この頭痛の原因をあたしは知ってる。
ずっと考えないようにしてたけど、どうやらそうはいかないみたい。
あと半年。
半年後にあたしは……もう。
ううん、ダメ。
弱気になってちゃ。
あたしは大丈夫。
頑張るって決めたでしょ?
「春田、しっかりしろ。助け呼んで来るから」
「ま、待って……大丈夫、だから」
かろうじて絞り出した声はすごく弱々しくて説得力がまるでない。
「大丈夫じゃねーだろ。とにかく」
「だ、大丈夫。うち……この近くだから」
めまいが落ち着いたら、歩いて帰れる。
だから、あたしのことは心配しないで。
矢沢君には迷惑をかけられない。
「近くなんだな。どこ?送る」
「い、いいよ……悪い、から」
「送るっつってんだろ。素直に言うこと聞いとけ。立てるか?」
で、でも……。
「遠慮すんな。立てるか?」
強い口調でそう言われ、戸惑いながらも頷いた。
「よし、じゃあ立つぞ」
「わ」
右腕が矢沢君の肩に回され、あたしの腰に矢沢君の腕が回された。
すぐそばに感じる体温。
矢沢君の髪の毛からは、水滴がポタポタ落ちている。
「ちょっと濡れるけど、ガマンしろよ」
そう言いながら、あたしの肩に濡れたブレザーをかけてくれた矢沢君。
「家どっちだ?説明出来るか?」
「う、うん……こっち」
「よし、パッと行くぞ。って、パッとはムリか。急ぎつつ、ゆっくり行くぞ」
2人分のカバンを持った矢沢君に支えられながら、土砂降りの雨の中を歩いた。
雨粒が顔に当たって気持ち悪い。
髪も一瞬にしてビショビショになってしまった。
だけど不思議と寒いとは思わなくて、矢沢君に支えられていた半身がやけに熱くて仕方なかった。