キミの笑顔が見たいだけ。
実はちょっと憧れてた放課後デート。
矢沢君と行けるなら、それ以上のことはない。
だってもう、きっと行けないと思うから。
最後くらい……好きなようにしてもいいよね。
なんて都合のいいこじつけ。
ホントは、ただ一緒にいたいだけなのに。
「おい、またボーッとしてるだろ」
「え……あ、ごめん」
せっかく矢沢君と歩いてるのに、あたしったら。
高垣君と花純は前を歩いている。
誰とも合わせることが出来る花純と、明るくて無邪気な性格の高垣君。
さっきからずっと、2人の間には笑い声が響いている。
端から見ても、2人はお似合いだ。
高垣君と矢沢君と花純はすごく目立つから、さっきからずっと注目の的になってる。
「やっぱり矢沢君と春田さんって付き合ってるの?最近よく一緒にいるよね」
「高垣君もこれまでは派手な子好きだったのに、次は清楚系の美人狙いってわけか。村上さんが相手じゃ勝ち目はないね」
「まぁね。なんたってマドンナですから」
「まぁでも、矢沢君と春田さんはちょっとなぁ。なんかショック」
「あは、言えてるー。春田さんはパッとしないっていうか」
「明らかに、普通だもんね」
ううっ。
聞こえてますよ、バッチリと。
そりゃあたしは釣り合わないけどさ。
わかってるよ、普通だってことくらい。
いじけたくなって、道端の石ころを蹴ってみた。
「気にすることないって。誰が何て言おうと菜都は可愛いから」
「なっ……」
隣を歩く矢沢君の顔を見上げると、頬をゆるめて柔らかく笑っていた。
あまりにも優しい眼差しに鼓動が跳ねる。
「はは、真っ赤」
スッと頬に触れた矢沢君のしなやかな指先。
熱を持ったようにジンジン熱い。
やばい、クラクラする。
鼓動が高鳴って、全身が熱くなった。