キミの笑顔が見たいだけ。
「おーい、なに2人の世界に入ってんだよー!公共の場でイチャイチャすんなっつーの」
いつの間にか前を歩いていた2人がこっちを見てニヤついていた。
「……してねーよ。こっちを見んなっつーの!」
「照れんなって」
「照れてねー!」
なんて言いながらも、赤く染まる矢沢君の頬。
高垣君はそんな矢沢君を見てニヤッと笑い、あたしに向かって意味深にウインクをしてみせた。
調子がいいというかノリが軽いというか、なんだか憎めないのはどうしてだろう。
4人で他愛ない話をしながら、駅の近くにあるショッピングモールに向かう。
そこの4階にある映画館が、この辺で一番大きな映画館。
「今日のニシセンさー、ヅラ取れかかってなかった?」
「え?ニシセンってヅラなの?」
あたしはギョッとして高垣君の方を振り返った。
ニシセンとは数学の西先生のこと。
「え、マジで言ってる?みんな知ってることだと思うけど」
「ウソ、知らないよ」
「菜都はそういうことに疎いから」
「花純ひどーい!」
「知らない奴がいたことに驚きだな」
「矢沢君まで」
何気ないことを話して笑い合える今この瞬間が、たまらなく愛おしいと思える。
この瞬間がずっと続けばいいのに。
そしたら、ずっと笑っていられるでしょ?