キミの笑顔が見たいだけ。


『どうして言わなかったんだよ?』


『そうだよ!なんで言ってくれなかったの?あたしたち、親友でしょ?隠し事はなしだって……言ったじゃん』


『ごめん、なさい……好きだから、嫌われたくなくて……こんなあたし、嫌でしょ?2人に見捨てられると思って……言えなかった』


暗闇の中に浮かぶスクリーンに映し出された女の子の泣き顔。


可愛くて演技が上手いって評判の女優で、確か年齢はあたしたちと同じだったはず。


つい数分前まで制服を着て笑ってたのに、今は病院のベッドの上で顔を覆っている。


その傍らには女の子の彼氏と親友が立っていた。


『見捨てるわけないだろ!死ぬなんて……ウソだよな?あと1ヶ月しか生きられないなんて、信じらんねーよ……っ』


『ごめん……っ』


ーードクン


まただ。


冷や汗が背中を伝う感覚。


ただの恋愛映画だと思っていたのに、まさかの展開に胸は苦しくなる一方。


たとえフィクションだとしても、自分のことと重なって見えてしまう。


幸せな日々を送る女の子に訪れた突然の悲劇。


彼女があと1ヶ月の命だと知って、2人は静かに涙を流していた。


そっか……。


ツラいのは当事者のあたしだけじゃないんだ。


当たり前だけど、周りもツラいんだよね……。


自分のことしか考えられなかった。


あたしが死んだら、傷付く人がたくさんいる。


みんなの心に深い傷を与えてしまうんだ。


花純はきっと泣くよね。


こんなあたしを好きだと言ってくれた矢沢君も……悲しむかな。


泣かせちゃいけない。


泣かせたくない。


矢沢君や花純の悲しむ顔は見たくない。


こんな風にあたしのことで泣いてほしくない。


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