キミの笑顔が見たいだけ。


映画が終わると花純もあたしも涙でぐちゃぐちゃだった。


高垣君の目も潤んでいて、人差し指で鼻をすすっている。


矢沢君は顔色ひとつ変えずに至って冷静。


「フィクションだろ。なんでそこまで感情移入出来るかわかんねー」


「うわ、鬼みたいな人がここにいるよっ」


花純が信じられないと言いたげに高垣君の腕を軽く引っ張る。


「晶斗は基本映画で泣かないタイプだからな。冷たい奴だよ。ま、春田さんのことに関しては冷静じゃいられなくなるみたいだけど」


「お前はいちいち一言余計なんだよ」


「んだよ、ホントのことだろー?」


「マジで黙れ」


イジワルに笑う高垣君と、淡々と言い返す矢沢君。


2人はなんだかんだで仲が良いらしい。


「ほら、お前もそろそろ泣き止めって」


頭をポンと撫でられた。


泣き顔のあたしを見て、矢沢君は眉を下げて笑っている。


いい加減、泣き止まなきゃ。


だけど、さっきのラストのシーンが頭に焼き付いて離れない。


結局女の子は死んでしまい、誰もハッピーになれずに終わってしまった。


そうだよ。


あたしの恋の結末はあの子と同じ。


誰も幸せになれずに終わってしまうんだ。


だから絶対に、この気持ちは矢沢君に打ち明けちゃダメ。


もう諦めなきゃ。


「それにしても、さっきの映画の主人公可愛かったよなー。ギリギリまで病気を隠してるところには共感出来なかったけど、すっげー感動した!」


「だよねー!なんでもっと早く打ち明けないの?って何度も思っちゃった」


「バカだよなぁ。もっと早く打ち明けたら、色々出来たかもしんねーのに。もっと思い出作ったり」


言えないよ……。


言えるわけないよ。


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