キミの笑顔が見たいだけ。


「あたし……だって……っく、ひっく」


なんで泣くんだよ……。


よっぽど言えねーようなことなのかよ。


俺は……菜都の泣き顔なんか見たくねーんだって。


お前には笑っててほしいんだ。


それなのに……泣かせてんのは俺だよな。


なんて、今さら自己嫌悪に陥ってるバカな俺。


俺の胸の中で静かに泣く菜都の頭を、何度も何度も繰り返し撫でた。


「ごめん……俺が悪かった」


言いたくないなら、ムリには聞かねーから。


だから泣き止めよ。


俺はただ、お前の笑顔が見たいだけなんだ。


「ち、がう……っく、矢沢君は……悪く、ないっ」


嗚咽をガマンして必死に声を絞り出す菜都。


華奢な体は今にも折れてしまいそうなほど儚げで、胸が痛い。


「菜都は悪くねー。泣かせてんのは、この俺だ」


「ちが、う……っ」


「あーもう、いいからさっさと泣き止め。お前に泣かれると、俺も苦しい」


「……ごべんっ」


ズーッと鼻をすする菜都。


< 97 / 222 >

この作品をシェア

pagetop