キミの笑顔が見たいだけ。
「矢沢君といるのが……ツラい」
「…………」
「……ごめんね」
そっからどうやって帰ったのかは、あんまよく覚えてない。
菜都を家に送り届けて帰り着いた時には、雨が上がっててそれほど濡れてはいなかった。
だけど心臓がヒヤリと冷たくて、やけに重苦しい。
なんなんだよ、これは。
「晶斗ー、メシだから下りて来い」
オヤジが俺を呼ぶ声がした。
ぶっちゃけ、食欲なんか全然ない。
って、マジでなんだこれ。
ガラにもなく傷心かよ。
はは……笑える。
いや、笑えねーだろ。
全然笑えねー……。
「はぁ」
「どうしたんだ?ため息なんか吐いて」
「別になんもねーよ」
「恋煩いか?」
「え?そうなの?」
ニヤッとほくそ笑むオヤジの隣で、お袋が目を見開く。
「へ、変なこと言ってんじゃねーよ!そんなんじゃねーし!」
「えー、晶斗に彼女が?」
なぜか目をキラキラさせ始めるお袋。
なんでそこまで話を盛るんだよ。
「出来てねーよ」
「お前の片想いだもんなー?」
「ああ、そうだよ……っ」
って、なに暴露してんだよ、俺……。
つい勢いで言っちまった。
情けねー。
ガックリとテーブルの上にうなだれる。
「ぷっ、まだ片想いしてたのかよ」
「仕方ないだろ……何回告っても、相手にされねーんだから。挙げ句の果てには、必要以上に関わるなとか言われるし」
もう、打つ手がねーんだよ。
って、俺はまたベラベラなに喋ってんだよ。
「あ、晶斗が健気に片想いしてるなんて……」