幼なじみのフキゲンなかくしごと

「……好きにすれば」


抑揚のない声でそう返事をしたかと思えば、瑞季くんは背中を向けてカバンを手に持つ。


そのまま黙ってドアの方へと進み。



……帰るの?って思わず聞いてしまいそうになる。

約束はなかったことになるのかな。



美結ちゃんが瑞季くんの腕を取って、はやくはやくというように廊下の外へと促す。

ちくっと胸が痛んだ。


すると、上から小さなため息のような吐息が落ちてきた。



「わあ矢代クン。幼なじみの女の子に、あいさつもしないで帰るんだ?」



葛西くんの口からこぼれたその言葉に、その場にいた全員が動きを止める。


……葛西くん、今、なんて?

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