幼なじみのフキゲンなかくしごと
しんとした空間で、高鳴る胸を抑えながら次の言葉を待つ。
だけど、しばらく経っても葛西くんの唇が再び開くことはなかった。
あらかじめ教室から持ってきていたらしいリュックを背負って、葛西くんは化学室のドアに手をかける。
「……お疲れさま。俺は先に帰るね」
「うん、お疲れさま。ばいばい」
「傘、持ってきてる?」
「うん」
「そう、よかった。帰り気をつけてね」
「ありがとう」
ばいばいともう一度手を振って、去っていく背中を見送った。
私はなんだか重たい足取りで自分の教室に向かう。
……カバン、持ってきとけばよかった。