幼なじみのフキゲンなかくしごと
私を見下ろしてくる瞳に、やっぱり色はなくて。
でも一瞬、揺れたように見えた。
「あさひにとっての男って、俺だけのはずだったのに」
そんな言葉がぽつりと降ってくる。
「これから、色んな男を知っていくんだろうね。俺の知らないとこで、たくさん」
「瑞季くん……?」
「別に関係ないけど。だって、俺は」
俺は───。
そう言いかけたあとで、瑞季くんは口をつぐんだ。
それから、少しだけ私と距離を取る。
「なぁお前、傘持ってる?」
「う……うん」
返事をするのがやっと。
「じゃあ、入れて。忘れたんだ」
あつい血液が体内をめぐってる。
言葉が頭の中をこだました。
「それとも、雨が止むまでここで待つ?
……俺とふたりで」