幼なじみのフキゲンなかくしごと
そう言われてから初めて目の前の文字に焦点を合わせた。
なにこれ……と固まる。
カタカナばっかりで意味わからない。
エスプレッソって聞いたことあるけど……美味しいのかな?
そうやって悩んでいるうちに、側を通りかかった女の店員さんが立ち止まった。
「ご注文、お決まりでしたらどうぞ」
小顔で、華やかな美人さん。
店員さんの雰囲気にすら圧倒される。
「まだ決めてねえの?」
「いっぱいあるからわかんない……」
助けを求めるように視線を向けると、瑞季くんが短く息を吐いた。
「アップルパイと、レモンティー1つ。俺は紅茶だけでいいや。いつものアールグレイ」
まるで暗唱するかのようにすらすらと口にする。
店員さんはそれを復唱したあと、丁寧にお辞儀をして去っていった。
……なんだ。
そんな普通のメニューもあったんだ。
瑞季くんに意識持っていかれすぎて気づかなかった。
「ありがとう。私アップルパイ大好き」
「知ってる」
直後、ドキンと心臓が跳ねた。
「覚えてるよ。ちゃんと」