幼なじみのフキゲンなかくしごと


「まあ俺なんかの話より、お前の話してよ」

「私……?」



頭の中が整理できてないせいで言葉がまとまらない。

必死に頭を巡らせていたら、瑞季くんがふっと笑った。




「変なカオ」

「えっ」

「そんなに考え込まなくていいだろ」

「………」


「なに、どうしたの」




顔を下から覗きこまれる。



「……ううん、なんでもない」



ただ、嬉しいだけ。

瑞季くんが私の目の前で笑ってることが。


息ができないくらい嬉しいから、言葉が出てこない。


そんなこと言っても、瑞季くんはたぶん……。




「おまたせ致しました」




カタッと目の前にお皿が置かれた。

香ばくて甘い、いい匂いがする。


ごゆっくりどうぞ、と微笑んで店員さんは奥の方に戻って行った。



「はい、あさひ」



瑞季くんがナイフとフォークを丁寧に差し出してくる。



「ありがとう……」



一つ一つの振る舞いが上品だから、やっぱりこの人は矢代リゾートの御曹司なんだなって実感させられる。


幼なじみのはずなのに、私と瑞季くんの間には埋めても埋めきれないほどの溝があるように感じた。


……ずっと前から、遠い人。
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