幼なじみのフキゲンなかくしごと
「あっ、いやごめんね? なんでもない。
……そっか、よかったね」
にこっと笑いかけてくれるけど、その表情はどこか曇っているように見えて。
「あさちゃん、お風呂まだでしょ? 生駒さんがあさちゃんの下着とかパジャマとか買って用意してくれてるからさ。入ってきなよ」
さらりと話題を変えられたことに違和感を覚えたけど、その笑顔が「これ以上なにも言わないで」って言ってるような気がして出かかった言葉を飲み込む。
「生駒さん、わざわさ……? なんか悪いな。ありがとう、お風呂借りるね」
私も同じように笑い返して、何も気にしていない風を装う。
話してくれないなら、聞いちゃだめだと思った。だから……
「……バカな選択をしたね、兄ちゃん」
すれ違ったあとで後ろから聞こえたそんな声にも
ぎゅっと目を閉じて、聞こえないふりをした───。