幼なじみのフキゲンなかくしごと

「今日、矢代くんまだ来てないんだね」


友香ちゃんが教室を見渡す。

瑞季くんは……。


熱がまだ下がってないのかもしれない。


───あの金曜日の夜。



瑞季くんの部屋を出てから翌日生駒さんが戻ってきて私を家に送ってくれるまで、一度も顔を合わせることはなかった。



お風呂からあがったあとは依吹くんと一緒にテレビを見て他愛もない話をしたけれど、瑞季くんの話題になることはなくて。

依吹くんは、それを避けているようにも感じた。



『依吹くんは好きな人とかいるの?』

という私の問いかけには

『……いないかな』

って、ちょっと困ったように笑ってた。



瑞季くんも依吹くんも。

自分のことは、あまり話したがらない……。

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