幼なじみのフキゲンなかくしごと
遠い人
「起立ー、礼」
朝礼が終わって、皆がぞろぞろと席を立っていく。
1限目は生物だから、私も早く準備して生物室に向かわなきゃいけないんだけど…
「矢代くん、今日来てないね〜」
「あたし矢代くんと生物同じ班だから、楽しみにしてたのに」
ちらほらと聞こえてくる会話を聞きながら、私の中で、よくわからない不安が膨らんでいた。
瑞季くんは昔からよく風邪をひいてたけど、今日来てない理由は、たぶん風邪なんかじゃ……ない。
なんとなくだけど、そんな気がする。
「ほら、あさひ。行くよ?」
上から降ってきた声に顔を上げると、少し首を傾げながら私を見る友香(ともか)ちゃんと目が合った。
頷いて、机の中から生物の教科書を取り出す。
「矢代くん、休みなんて珍しいね」
友香ちゃんがぽつりと呟く。
「あ、うん……」
中学からの親友の友香ちゃんは、私と瑞季くんの関係を知っている。
「……もしかして、矢代くんが休んでる理由、あさひ知ってるの?」
「えっ」
「なんか、考えこんでるみたいだったから、そうなのかなーって」
「……んーん。知らない、けど……」
「……けど?」
「瑞季くん……もう学校に来なくなるんじゃないかとか考えちゃって」