幼なじみのフキゲンなかくしごと
*
校門を出て5分ほど歩いたところで、生駒さんの車が道沿いに静かに停車した。
ドアが開き、車内に足を踏み入れる。
中には、なぜか依吹も座っていた。
「お前、なんで……」
読んでいた本にしおりをはさんで、俺を見る。
「なんとなく」
「なにそれ」
「……兄ちゃんが父さんに会う前に、ちょっと話したいことあった」
「……何」
「……」
沈黙。
依吹は結局 何も言わないまま、再び文庫に視線を落とした。
車が走り出す。
このまま家に着かなければいいのに、とか。バカな思考しか浮かんでこない。
ゆっくりと瞳を閉じる。
ページをめくる音と、タイヤの摩擦音だけが車内に響いていた。