幼なじみのフキゲンなかくしごと




校門を出て5分ほど歩いたところで、生駒さんの車が道沿いに静かに停車した。


ドアが開き、車内に足を踏み入れる。


中には、なぜか依吹も座っていた。




「お前、なんで……」



読んでいた本にしおりをはさんで、俺を見る。



「なんとなく」

「なにそれ」

「……兄ちゃんが父さんに会う前に、ちょっと話したいことあった」

「……何」

「……」



沈黙。

依吹は結局 何も言わないまま、再び文庫に視線を落とした。



車が走り出す。


このまま家に着かなければいいのに、とか。バカな思考しか浮かんでこない。



ゆっくりと瞳を閉じる。


ページをめくる音と、タイヤの摩擦音だけが車内に響いていた。


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