幼なじみのフキゲンなかくしごと

───



「瑞季様。依吹様。到着致しました」



運転席から声がかかり、浅い眠りの世界から現実に戻される。


パタン、と音を立てて依吹が本を閉じた。



「兄ちゃん」



目を合わせずに、ぼそりと小さな声で話しかけてくる。



「兄ちゃんは……」

「……何?」



またしても黙り込む依吹の顔をそっとのぞき込んでその先を急かすけれど、少し待ってみても口を開く気配はない。



あきらめて、そのまま車を降りる。



「……瑞季様。だめですよ、そんな寒い格好をなさっていては。風邪をひいてしまいます」


生駒さんがコートを差し出してくれたけど、首を横に振って断った。



「もう、すぐ玄関だし大丈夫」

「……明日からはきちんと防寒なさってくださいね」


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