幼なじみのフキゲンなかくしごと
不安で仕方ないというようなカオをして。
返事をしない俺を恐る恐る見上げたかと思えば、制服の裾をぎゅっと握ってくる。
「ねえってば……しないよね?」
久々に、こんな依吹を見た気がした。
中学に入ってから、いつもどこか冷めたような態度ばかりで、周りに甘えることもしなくなった。
表情などに幼さは残っているものの、同じ中学生たちと比べれば明らかに大人びている。
学校でのこいつがどうなのかは分からないけれど、少なくともこの家の中ではそうだった。
「必死だね、お前」
ふっと微笑んで、依吹の頭にそっと手を置く。
……仕方ない。こんな環境で育って、素直に生きれるはずなんてないんだ。
本当の自分?
もう、分かんねぇよ。そんなの。
まだ何か言いたそうな弟をひとり残して、
部屋を出た。
鈍い痛みが、胸の奥から消えないまま。