幼なじみのフキゲンなかくしごと
小4の秋頃、学校全体で「大事な人に想いを伝えよう」というようなコンセプトのイベントが行われた。
具体的には、日頃の感謝を込めて身近な誰かに手紙を書いて送るというもので、家族や先生など、誰に宛てて書いてもよかった。
けれど、自分が誰に向けてそれを書いたのかは覚えていない。
恐らく父か、生駒さんか弟か。
もしくは、母──。
文章はテキトウに済ませて、結局誰にも渡さずに捨ててしまったのだと思う。
手紙なんて興味がなかった。
どうでもいいイベントだった。
それなのに、今でもこの日のことを鮮明に覚えているのは……。
『みずきくん、帰ろ?』
放課後、教室のドアから赤い顔をちょこんとのぞかせて。
背中に手紙を隠し持ったあさひが、俺の元にやって来たから──