幼なじみのフキゲンなかくしごと
◆
「……季」
ぼんやりとした意識の中。
「瑞季!」
ハッと現実に戻された。
煙草の煙が鼻を突く。
目の前には、厳しい顔をしている父。
「お前、人の話を聞いていたか?」
「すみません……ぼうっとしていて。えっと、当日は母さんも来るって話ですよね」
「そうだ。この家を出ていったにしても、一応はお前の母親だからな」
「……はい」
重苦しい空気に息が詰まりそうだった。
時計の秒針がやけに遅く感じる。
「それから……これが本題なんだが」
父が、煙草を灰皿に戻した。
「相手方の都合で、結婚式の時期を早めたいという申し出があってだな。来年の4月……お前の誕生日に」