幼なじみのフキゲンなかくしごと


気づけば走っていた。

頭の中ががいっぱいで混乱していた。


あと少しで1階だという、階段の踊り場で
下から上ってきていた誰かとぶつかる。



「っ、すみませ……」



謝りながら顔をあげると、そこには見知った顔があった。



「あさちゃん…!」


依吹くんは心配そうに私を見上げる。



「あのね、葛西さんから伝言頼まれて……車で待ってるって。……あさちゃん……?どうしたの?」



依吹くんを目の前にしたら、緊張が緩んだのか涙がこぼれてきた。



「ごめんね、何でもない」

「兄ちゃんが、あさちゃんにひどいこと言ったの?」

「…っ」

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