幼なじみのフキゲンなかくしごと





それは、終礼が終わってまもなくのこと。


「起立ー」と号令がかかり、みんなが一斉に席を立ってバラバラと頭を下げたあと、

慌ただしくドアをスライドさせる音が教室に響いた。




「あさひちゃんいる?」



担任の先生と入れ替わりで入ってきたその男子生徒に、みんなの視線が一気に集まる。



昼休みとは違って、すぐさま私の姿をとらえた葛西くんは、大股でこちらに歩み寄ってきた。


クラスのみんなの視線を浴びて、目立つのがあまり好きじゃない私は混乱する。




「やっほ。さっきぶり!」


なんて気安く笑いかけてくるけど。



「迎えに来るとか、聞いてない……」


「え、言わなかったけ?」


「言ってないよ」


「そうだっけ? それよりさ……」



ぐっ、と顔を近づけられた。

甘い匂い。緊張してるのか、くらっときた。


葛西くんは私の耳元で小さく囁く。




「ーー 矢代が、俺を睨んでる気がするのは気のせいかな」

< 73 / 304 >

この作品をシェア

pagetop