幼なじみのフキゲンなかくしごと
それは、終礼が終わってまもなくのこと。
「起立ー」と号令がかかり、みんなが一斉に席を立ってバラバラと頭を下げたあと、
慌ただしくドアをスライドさせる音が教室に響いた。
「あさひちゃんいる?」
担任の先生と入れ替わりで入ってきたその男子生徒に、みんなの視線が一気に集まる。
昼休みとは違って、すぐさま私の姿をとらえた葛西くんは、大股でこちらに歩み寄ってきた。
クラスのみんなの視線を浴びて、目立つのがあまり好きじゃない私は混乱する。
「やっほ。さっきぶり!」
なんて気安く笑いかけてくるけど。
「迎えに来るとか、聞いてない……」
「え、言わなかったけ?」
「言ってないよ」
「そうだっけ? それよりさ……」
ぐっ、と顔を近づけられた。
甘い匂い。緊張してるのか、くらっときた。
葛西くんは私の耳元で小さく囁く。
「ーー 矢代が、俺を睨んでる気がするのは気のせいかな」