現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
何故か分からないけど、無性に岡田さんに触れたくなってしまって、後ろからギュッと抱きしめた。
突然のことで、岡田さんの身体がビクッと跳ねる。

「わ……!ど、どうした?急に!」

「うーんと……。分からないんだけど、なんかちょっと抱きしめたくなって?」

自分からこうやって岡田さんに寄るのは、年末のあのとき以来。
岡田さんも驚いていたようだけど、ふふっと少し笑い声が聞こえ、身体に回していた怪我をしていない方の手に岡田さんの手が重なる。

「里緒奈から来てくれるのはやっぱり嬉しいな。……夢じゃないよね?」

「夢って、……そんなに珍しいもん?」

「だってあまり里緒奈から、やってくれたことないじゃん」

そりゃそうだけど……。
自分から行くって結構勇気いるんだから。

「私、和宏くんみたいに積極的な人間じゃないからね」

その言葉に岡田さんは勢いよくぐるん、と私の方に身体を向け、そしてキスをした。
思ったよりも濃いキスに、一気に頭の中が真っ白になってしまう。

「……ふあ……っ……んっ……!なに……?」

「違うよ、普段の俺は積極的な人間なんかじゃない。里緒奈だから、積極的になれるんだ」

身体から力が抜けてふらついてしまう私を支えるように、私の腰に手を回して抱きしめた。
岡田さんの少し早い鼓動がハッキリと感じられて、私もつられて鼓動が早くなる。

見上げると岡田さんは少し笑っていて、その笑みがとても幸せそうだった。
その顔を見て、私の心の中がほわりと温かくなっていく。

「……ねえ、和宏くん」

「なに?」



「少し不安なところはあるけどね、私、和宏くんに付いていくことにするよ。……一緒にタイに行こうと思ってる」
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