現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
それから
――それから、五年後――……。
「真輔(しんすけ)くーん!!ほら、こっちおいで!!」
新緑の季節。
生き生きとした葉っぱや色とりどりの花たちが、暖かな風に揺れる。
雲ひとつない晴天。
太陽は煌々と青いキャンバスに輝いている。
今日は、五年越しのふたりの結婚式。
結婚式もあげないままにタイへ行き、そのまま四年半ほど住み、晴れて元の工場へと戻る辞令が出て、帰って来ることが出来た。
タイに行ってすぐに男の子を授かり、異国の地で生むのはなにかと大変だったけれど、日本から父や母、和宏くんの両親も来てくれたりして、なんとか母子ともに健康で生むことが出来た。
名前は真輔。
もう早いもので四歳になる。
のびのびと育てた結果、真輔はだいぶわんぱくな子に育ち、毎日が戦争。
寝る頃には私も和宏くんもヘトヘトで大変だけど、とても充実している。
タイにいた四年半、慣れない気候と食生活、そして初めての妊娠と、最初は不安で辛くてホームシックにかかって泣いたりすることもあった。
でも、傍にいつも和宏くんがいてくれて、大丈夫だよって慰めてくれて。
そして優しく抱きしめてくれた。
和宏くんの胸の中は、包まれるたびに安心と強さをくれる。
お陰で途中からは、楽しく家族三人で暮らすことが出来るようになった。
日本に帰れるって言われたとき、嬉しかったけどちょっと寂しくも思ったくらいだったし。
あんなに苦手だったパクチーも、食べられるようになったし。
ともかく、あの四年半は私にとって、物凄く濃い経験のひとつになったと思う。
そして、日本に帰って来て、和宏くんが『真輔も大きくなったし、結婚式あげられなかったから、ちょっと遅くなったけど結婚式しようか』って言ってくれて。
それから半年かけて結婚式の準備を進め、そしてようやくこの日を迎えたのだった。