現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
「さあ、出来ましたよ」

ベールを最後にセットされ、スタッフに立ち上がるよう促される。

私は椅子から立ち上がり、出来上がりを大きな姿見で映した。

胸元に花の刺繍と、キラキラと光るスパンコールが散りばめられたAラインのウェディングドレス。
スッキリと後ろに纏められた髪には、白のユリが飾りでついている。

自分でも驚くくらい綺麗に仕上がっていて、つい見とれてしまった。

「まるでお姫さまみたいだね」

「お姫さまなんて柄じゃないよ……。でも、うん。綺麗」

「そろそろ式の時間になります」、と言われ、和宏くんにエスコートされてチャペルの入り口まで向かった。

入り口には、父がそわそわしながら立って待っていて、私を見るなり驚いた表情を浮かべる。

「お、おお里緒奈……。なんてこった、今までのお前とはえらい違いだぞ……。本当に俺の娘なのか?」

「ちょっと、紛れもなく父さんの子ですけど。私もね、ちょっと頑張ればここまで美しくなれるのよ」

「ああ、アレだ。昔の母さんを見ているようだ……。今は面影もないが」

「それ、母さんに聞かれたら張り倒されるよ」

和宏くんはバージンロードの先で待つため、先にチャペルへと入り、入り口には扉を開けるスタッフと私のヘアメイクをしてくれたスタッフ、そして私と父だけになった。

「しかし、もう何年も前に嫁に行ったってのに、こう改めて結婚式をやるとなると、なんだか寂しく思えるな」

「どうしたの父さん、いきなりしんみりしちゃって」

「いや、なんかな。今、お前との色んな思い出が蘇ってきてな。言葉では上手く言い表せないんだが、その……、俺の娘に生まれてきてくれてありがとうな、里緒奈」

「父さん……」

父さんの目には、うっすら涙が滲んでいる。

いつも冗談しか言わない父が、そう素直に言ってくれるとは思わなかったから、私も胸が苦しくなって泣きそうになった。

「ううん、私こそ父さんと母さんの子供に生まれて、本当に良かったと思ってるよ。本当に今まで育ててくれてありがとうね。……そして、これからもよろしくね」

「おう……。なんだよ、始まる前から泣かせるんじゃねえよ、バカ」

「泣かせに来たのは父さんでしょうが……!」

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