現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
課長のその顔を見て、彼女がこの工場で愛されているのが良く分かる。
そんな彼女を羨ましいとも思うし、愛しいとも思った。


真壁さん……、か。
いつか、里緒奈って呼べる仲になれればいいな。

部品を見るときの、あの可愛らしい笑顔を俺に向けて、「和宏くん」って呼んでくれたら。

俺は嬉しくて、どれだけ舞い上がっちゃうか分からない。

でも、そうなるためには、俺が一歩踏み出さなきゃいけないんだけど。


なんでこんなに、勇気が出ないんだろう。

俺ってこんなに弱虫な人間だったかな?


自分で言うのもなんだけど、今まで恋愛でこんなに悩んだことはなかった。

大体は女の子の方から寄ってきてくれて、徐々に仲良くなってそれなりにつき合って、で上手くいかなくなって別れるってのが定番。

付き合う前から好きってより、仲良くなりながら好きになっていたから、声をかけられないで悩むなんてことは、今回が初めてなわけで。

自分から寄っていくのがこんなに勇気がいるんだって、初めて知ったくらいだ。

こんなに近くにいるのに。
手の届くところに彼女はいるのに。


真壁さん、って名前を呼べない俺は、誰よりもヘタレな男だ。


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