現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
「ダメだったら、しこたまここで飲ませてやるよ。立ち直れるまでちゃんと話を聞いてやるから、やって来いよ、お前もいい年した男だろうが」

「……立ち直るまでに何年かかかるかもしれないけど、いい?タイに行ってもちょくちょく帰ってきて、朝まで愚痴垂れ流すけど……」

「う……、それは、まあそのときの状況次第でだな……。とりあえず、まず声をかけろ!話はそれからだ。その一歩がなきゃ話はこれ以上は進まん」

「そうだね……」


マスターは店の冷蔵庫を開け、ビール瓶を取り出した。
栓を抜くと、グラスにとくとくと注いで、俺に差し出す。


「営業外だから、俺の奢りだ。しっかりと飲んで、戦いに備えろ。なあに、お前のことだから、ただだれかに話を聞いてもらって、背中を押してもらいたかっただけなんだよな?どうしたらいいじゃなく、ただ、だれかに勇気を貰いたかっただけなんだよな」


……図星だ。

そうだ、ただ、だれかにこの気持ちを知って欲しかっただけ。



たぶん誰に相談をしたって、みんな返って来る言葉は同じだってことは知ってた。

激を入れて貰いたかっただけ、応援してくれる声を期待していただけだ。



「ったく、女々しい奴だなぁ、お前は。もう少し男らしくなれよ」

「……自覚してるんで、なにも言えないです」



いつも飲んでいるビールなのに、このときばかりは、やけに強くアルコールが感じられた。


身体の中が、ぼうっと熱くなっていくのが分かる。
それと同時に、俺の気持ちもより熱くなっていった。
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