現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
それから、何日か経ち。

また菱沼へと行く日がやってきた。


朝、家を出る前に鏡に向かって、自分の顔を映し、気合を入れるように両手で強めに頬を叩く。

今日こそは、彼女に声をかける。
ただ見ているだけの関係は、今日で終わりにするんだ。


菱沼へと行き、いつものように仕事をしながら、話しかけるタイミングを伺っていた。

やっぱり一番いいのは、休み時間のタイミングかな?
缶コーヒーでも持っていって、さり気なく渡して、声をかける。
それが一番自然かもな。


……とはいえ、なぜか話しかける前に、ちょっと彼女に近付いてみたくなって。

全体の作業風景を見る形で、工場の中をゆっくりと歩き回りながら、彼女の仕事を間近で見てみることにした。

彼女は作業に熱中していて、俺が隣で見ていることに気付かない。

口角をキュッと強めに閉じて、顔に付いた汚れも気にせず、部品を手際よく削っている。


ああ、やっぱり好きだなぁ。
どんな女性よりも、彼女はキラキラ輝いている。

そんな彼女を見ていたら、声をかけてみたい衝動に駆られた。

幸い、周りは機械音でうるさく、作業員はみんな耳栓をしながら作業をしている。
普通のトーンで言っても聞こえないよね。

どうせだから、ちょっと突っ込んだことでも言ってみるか。
このうるささじゃ聞こえないんだからさ。


これは練習。
休憩時間に声をかけるための、予行練習だ。




「ねえ、真壁さんってさ、彼氏とかいないの?」



~END~

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