現場系男子にご用心!?【長編改訂版】

***


「今日は暇?また飲みに行こうよ」

いつものように岡田さんの来る日。
ちょうど部品の研磨が終わったタイミングで、岡田さんは声を掛けてきた。

機械を止め安全を確認してから、保護メガネを上げて岡田さんを見上げる。
相変わらず爽やかな笑みを浮かべ私を見ていた。

耳栓をしているのに、声が聞こえたってことは……。


「顔を耳もとに近づけすぎです」

「あはは、ごめん。でもそうしないと耳栓してるから聞こえないでしょ」


じゃあ休憩時間に話せばいいのに。
いきなり親密そうにされたら、変に噂されちゃうじゃないか。


周りには少しでも、仕事の話をしているように見せかけるため、研磨した部品を確認するような動きをしながら、岡田さんに話す。


「今日はちょっと用事があるんで、無理です」


別にこれといった用事があるわけでもないのに、そう言って誘いを断った。

奢りとはいえ(勝手に決定事項)毎回岡田さんとは飲みには行けない。
大体にして、今日は水曜で週の半ば。明日ももちろん仕事なわけで。

若いときと違って次の日もお酒が若干残るようになったし。

先週だって、岡田さんと飲みに行った次の日は、昼過ぎまでちょっと身体がふらふらして仕事が思ったように出来なかった。


「そうか、残念。じゃあ今週の土曜日は?空いてる?」

「土曜日ですか?」

「うん。仕事休みだよね。ってか、今日断ったのは次の日仕事だからでしょ。あまり飲めないから断ったんだよね?」


……気付かれてる。



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