現場系男子にご用心！？【長編改訂版】

「な、なに言ってんですか？」

「あ、聞こえてた？」

動揺しながらそう話すと、岡田さんはおどけた顔でそう答えた。
その表情に、少しムッとしてしまう。

……からかっているのだろうか、私のこと。
確かに彼氏なんてもう何年もいない、寂しい女ですが。


でも、それをこの人に言うのはどうも悔しい。


「いてもいなくても、岡田さんには関係ないことですから、言いません」

「そうムキになるってことは、いないんだね？」

そう言うと意地悪そうな笑みを浮かべる。
私は言葉に詰まって、なにも言い返すことが出来ない。

ち、ちくしょう、してやられた。
こんなことなら、嘘でもいいからいるって言えば良かった。

「……っていうか仕事中なんで、邪魔しないでください」

「ああ、そうだね、ゴメン。でも良かった、いいこと聞けて」

岡田さんはそう言ってニコリと笑うと、私から離れプレス機の方へと向かっていった。
私はぽかんと口を半開きにしながら、あっけにとられる。

……いいこと？
私に彼氏がいないことが？


そう思ったら、だんだんとムカついてしまった。


しかしながら、今は仕事中である。

イライラしたままで作業なんてしたら、怪我をしかねない。

目の前にある研磨機は、動いているやすりに手が触れてしまったら、軽く肉が抉れてしまうくらい危険なもの。

こんな状態で作業をしたら、怪我もさることながら、研磨も上手く出来ない。


ふう、と息を吐き気持ちを落ちつかせる。


駄目だダメだ、忘れなければ。
この程度でムカついてはいけない。

平常心、平常心。


そうやって気持ちを切り替えると、ボタンを押して解除し、仕事を再開した。