現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
「――もしもし」

『あ、お疲れ、里緒奈。今なにしてたの?』

「家に帰って晩酌タイムです。邪魔しないでください」

『えー、いいなぁ。俺も混ざりたい、行っていい?』

「無理です。切ります」

『ああ、ゴメン!切らないで、嘘ウソ、行かない!』


なんだこの電話は。
用があって掛けたんじゃないのか。

こっちはアツアツの大根を食べたいのを我慢して出てやっているというのに。


「で、ご用件は?」

『え?特にないんだけど。用もないのに掛けちゃダメ?』

「ダメですね。こっちはアツアツのおでんを食べるのを中断して電話に出ているので、用がなければ切りたいです」

『そうかー……。じゃあ里緒奈の声が聴きたくて電話したんだけど』

その言葉に思わず、かしゃん、と箸をテーブルに落としてしまった。
耳もとから一気に赤くなる。

またさりげなくこっぱずかしいセリフを言う!
どうしてそうべらべらと言えるんだ、コイツは!

『あはは、動揺したでしょ?なにかが落ちる音が聞こえたよ。……可愛い』

「……っ!それ要件じゃないでしょう!そういうの止めて下さい!」

『なんで?』

「なんでって……」

そんなもん、恥ずかしいからに決まってんじゃん。

分かっているくせに、意地悪な男だ。

「もう切ります!」

『あー!ごめんごめん、からかい過ぎた。でも里緒奈の声を聴きたかったのは本当だよ。聴けて良かった、元気出た。ちょっと今トラブっててね、少し休憩してたとこなんだ』


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