現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
―――水曜日。
岡田さんが来る日。
朝会社へ入ると、何故か周りの人達がそわそわしているように感じた。
私と目を合わすと、みなにやける。
気持ち悪いと感じたが、すぐにあることに気付く。
……ああ、そういうことか。
妙に納得し、女子更衣室へと消えた。
岡田さんとのことは、なにを言っても誰も信じてくれないから、開き直ることにした。
ニヤニヤと見たりからかわれるけど、仕事中まで続くわけでもないから自分さえ気にしなければ作業に支障はない。
ムキになるだけ逆に疲れてしまう。
人の噂も七十五日。
いずれはそんな噂なんて、時が経てば気にもしなくなるだろう。
作業着を着て仕事場へと行くと、既に岡田さんはいて仕事をしていた。
工場の隅にある作業手順書などが置いてあるデスクに座り、設計図を眺めては厳しい表情を浮かべている。
普段の仕事の顔。
その表情にドキッとする。
挨拶くらいはした方がいいと思うが、邪魔はいけないだろう。
敢えて声を掛けずに、自分の持ち場へと行こうとした。
そのとき、岡田さんが私に気付く。
すると、あれだけ厳しい表情を浮かべていたはずなのに、とびっきりの笑顔へと変わった。
それにもまた心が高鳴る。
そして岡田さんは私の元へとやって来た。
「おはよう、真壁さん。一昨日はありがとう」
「おはようございます。大丈夫でしたか?あの後」
「うん、少し遅くなったけど、大きなトラブルに発展せずにすんだよ」
まあ見事な爽やかスマイルであることよ。
工場内の人達は、私達が話をしているのを遠巻きに見ながら、やっぱりニヤニヤしていた。
「そう言えば、ここに来て東雲さんに言われたけど、俺達付き合ってるってことになってるんだって?」
「ああ、それ何回違うって言っても聞かなくて。残念ながらこの工場全体には、そのように知れ渡っちゃってます」
「そうなの!?……そりゃあまたいいこと聞いた」
「なんですか、それ。からかわれる身にもなって下さいよ。疲れるったらありゃしない」
「じゃあ、もうこの際だから付き合っちゃえばいいじゃん。そうすれば気にしなくてすむよ?」
「……付き合ってなくても気にしないことにしたんで、別にいいです」
つれないなぁ、なんて笑いながら言う岡田さんをよそに、私は軽く礼をすると持ち場へと向かった。
機械の立ち上げをしながらも、顔はずっと赤いままだった。
それを見られたくなくて、早々に岡田さんから離れたのだ。
その後、始業のベルが鳴り、私は研磨機に向かっていつもの作業に取り掛かった。
ところが、問題がひとつ。
なぜか岡田さんが気になってしまう。
部品の研磨がひとつ終わるたびに、岡田さんを目で探してしまうのだった。