現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
それは、ちょうど外から正面玄関へと向かう岡田さんの姿だった。
岡田さんの隣には、作業着ではない制服を着た、これまた綺麗な人が一緒に並んで歩いている。


雑談をしながらだろうか、ふたりとも笑顔で楽しそうだ。
そして、美男美女だからとても絵になる。



どくり、と心臓が大きく鳴った。



仕事中だし同じ職場の人と話をすることは、別におかしいことじゃないけど。

でも何故か、その光景にショックを受けている自分がいた。

それと同時に、これが本来あるべき姿だよなぁ……なんて、妙に納得してしまう自分もいて。


私が岡田さんの隣にいても、あんなふうに絵にならないもの。
岡田さんにはやっぱり、あのくらい綺麗な人が隣にいた方がいいんだよ。




ぼんやりとふたりを車の中で見ていたら、岡田さんがこちらに目線を向ける。

ばちりと目が合って、ハッと意識を取り戻した。

岡田さんは、こちらへ身体を向けて私の乗る車へと向かって歩いてくる。
そんな岡田さんを振り切るように、私は目線を逸らして車を動かした。


岡田さんが車の方に身体を向けて、なにか言っているような姿がバックミラー越しに見えたけど、その姿はどんどんと小さくなった。


どくどくと心臓は激しさを止めない。


まさか目が合うなんて思わなかった。
無視して来ちゃったけど、でも、あの状態では声なんて掛けられない。



そのまま工場を出て少し走らせたところで、道路の脇にチェーンの脱着場が見えた。


こんな状態で運転してたら、事故を起こしかねない。

少し気持ちを落ち着けようと、そこで一旦車を止めた。


エンジンを止めシートを倒して身体を預け、顔を手で覆う。
微かに車の行き来する音だけが、私の耳に入った。

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