現場系男子にご用心！？【長編改訂版】

思った以上に、自分の感情はぐちゃぐちゃだった。

あんな光景見せられたら、自信なんて持てるどころか無くしてしまう。
どう努力したって、綺麗な人にはなれないもの。


深入りする前で良かったじゃん。

まだ、岡田さんとはなにもないんだから。
今なら、これ以上傷付くことはないんだし、時が経てばきっとこんな思いも忘れることが出来るはず。


そのとき、ズボンのポケットに入れていた携帯が、ぶるると震える。
ディスプレイには、メールが一件表示されていた。


『どうして無視したの』


それは岡田さんからのメールだった。
絵文字もなんにもない、無機質な文章。

その文章から、岡田さんの感情がひしひしと伝わる。

「返せないよ……」

隣にいた女の人に、私が岡田さんの知り合いだなんて、岡田さんに申し訳なくて知られたくなかった、だなんて言えるわけない。

絵になるふたりを見て、ショックだったなんて言えるわけないよ。

また岡田さんから連絡が来るのが苦しくて、電源を落とし乱暴にポケットの中に隠した。
電源を落とすなって言われたけど、もう無理。

電話されても出る勇気もない。

「あーもう……、私ってこんなにヘタレだったか？」

こんな自分知らない。
自分はもっとさばっとしてて、ちょっとしたことでも悩むような人間じゃなかったはずなのに。


……きっとそれだけ、岡田さんのことを意識してたってことだよね？
岡田さんは自分もまだ知らない、もうひとりの自分を引き出してくれた人なんだ。



少しの時間その場でシートに横になりながら、気持ちを落ち着け会社へと戻る。
戻る頃には会議も終わっていたようで、事務所には課長の姿があった。

「お帰り、真壁。ありがとなー、持っていってくれて。会えたか？岡田ちゃんに」

「残念でした、ご期待に沿えなくて。部品は無事に届けましたよ」

「そうかー。まああれだけデカい工場だからな、会う方がまれか。まあお疲れ。休憩してから仕事に戻れ」

社用車の鍵を課長に渡し、休憩室へと行く。

本当は、岡田さんと目が合いはしたけど。
会ったなんて言いたくなかったから、課長には嘘をついた。


他の社員はもう既に休憩時間を終え、仕事を再開しているため、休憩室はひとり。
遠くの方から、機械の甲高い音が聞こえるだけだ。

給茶機のお茶を飲みながら、ひとつため息をついた。