現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
「切れてました?じゃねえよ。切ったんだろ自分で。なに?そんなに俺とやり取りするのが嫌なの?」

「べ、別に嫌ってわけじゃ……」

「じゃあなんで?」

「なんでって……」


……言えるわけない。
あんな微妙なこと、言えるわけない。

私は俯いて、そこからなにも言えなくなった。

俯いた先には岡田さんの靴があって、小刻みに上下に動いている。
明らかに私にイライラしているのが、その動きだけでも分かった。


「ちょっと来て」

話さない私に我慢ならなくなったのか、岡田さんは私の腕を掴んだ。

「ちょ、ちょっと岡田さん!」

「里緒奈の本音が聞けなきゃ納得できない。乗って、車に」

助手席に半ば強引に入れられ、あっという間に車が動く。
岡田さんは厳しい顔で、前だけを見ていた。

スロウなジャズのメロデイーが、微かに聞こえる。
心が休まるはずのジャズも、この空気では一切休まるわけもない。

「どこに、いくの?」

恐る恐る、岡田さんを見ながら聞いた。

「落ち着いて話が出来るところ。別に変な場所に行くわけじゃない。……場合によっては行かなきゃいけないかもしれないけど」

冗談とも本気とも取れるその発言に、背筋がひゅっと寒くなって、またなにも言えなくなった。


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