現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
「真壁、これ追加で削ってくれるか?今日中に必要らしいから、早めにやって欲しいんだが」
部品を削り終えてチェックをしていると、どさり、とプレスしたばかりの部品が入った箱を置き、トントンと私の肩を叩いて課長は私に言った。
箱一杯の部品が目に入る。
「これ、全部ですか?」
「ああ、急にやってくれと連絡があってね。まだあるんだが、それは他の奴にも回す今日の分は明日以降に回しても構わんから、とりあえずこっち優先で終わらせてくれ」
「分かりました。今日中に、ですね」
「悪いね、よろしく頼むよ。……しかしアレだな、お前、少し変わったな」
「へ?な、なにがですか?」
「ちょっと女らしくなった。なんつーか、こう、フェロモンが出てるっていう?わはは、やっぱり恋すると違うねぇ~」
笑いながらばしばしと私の背中を叩き、そして事務所の方へと戻っていく。
叩かれた背中が痛いったらありゃしない。……赤くなってたりして。
相変わらずの軽いセクハラ発言。
まあ、別に課長の下ネタなんて慣れているから、気にもしないけど。
しかし女らしくなったと言われるとは思わなかった。
外見は特に前と同じ、そんなに気を遣っているわけでもないんだけどな。
……フェロモンか。
そんな言葉、一生聞くことがないと思っていたけど。
そうなのか、出てるのか。私から。
くんくん、と自分自身を嗅いでみるが、いつも通り油臭いだけだ。
「自分では分かるもんじゃないか」
ふむ。と妙に納得し、そしてまた気を取り直すと作業へと向かった。
結局、作業が終わったのは定時少し過ぎてだった。
いかんせんあの時間から、あれだけの部品の量を時間内に終わらすのが至難の業だ。
それでもなんとか終わることが出来たけれども。
やはりまだまだだな、と自分の未熟さに少しへこむ。
同じ作業をしていた先輩たちは、それでもみんな時間内に終わっていたから。
もっと技術を高めていかないと。
正確さとスピードと、どちらも必要なものだ。