現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
話が終わったところでちょうど工場へと着いた。
「じゃあ」と言って、シートベルトを外したところで、岡田さんに腕を掴まれる。

「待って。いってらっしゃいのキスは?」

「は!?ここ、工場の前ですけど!?」

「今なら人いない。軽くでいいから、して?」

ホントかよ!と辺りをキョロキョロと見回す。
たしかに今は人はいないけど……。

掴まれた腕は、どうやらキスをしなきゃ放されないようだ。
しかも岡田さん、真剣な顔で私を見てるし……。

意を決してサッと素早く、本当にほんの一瞬、岡田さんの唇に触れる。
そして直ぐに岡田さんから離れた。

もう一度辺りを見回して、人がいないことを確認する。

よかった、誰にも見られていないようだ。

「ありがとう。じゃあね里緒奈。また連絡する。仕事頑張ってな」

「お、岡……、和宏くんこそ、頑張って」

顔を真っ赤にしてそう言うと、岡田さんは嬉しそうに破顔した。

車が見えなくなるまで、見送ったあと、工場へと入る。

岡田さんがいなくなったあとも、顔が依然熱い。
汗が吹き出しちゃいそうなくらい、熱い。

こんなふうにちょっとしたことで、ドキドキしたりする付き合いなんてしたことなかったから、戸惑うばかりだ。

前はもっと冷めてて、お互い好きなことやって、会えそうなときに会うって感じだったから、イベントなんてふたりで過ごすことなんてほとんどなかった。

相手の性格が違うだけで、こんなにも変わるなんて。


……やっぱり、恋愛って不思議だ。

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