現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
……とはいえ。

年の瀬が近く、つまり年末の長期休みに向けて、工場の中は忙しさを増していた。

私たちのところですら普段はない残業をして仕事をしているから、無論岡田さんの工場は、さらに多忙を極めているようだった。

そんな状態で電話はくることもなく、メールすら夜中、私が寝てしまったあとに返ってくることもしばしば。
内容だって当たり障りのない文章で、あのときの結婚の話は、一切触れられることはなかった。

私がいい返事を言わなかったことを、気にしてるんじゃないか。
もしかして、もう私のことを嫌になっちゃった?

考えなくてもいいことを、余計に考えてしまって不安になる。
長期休みまで、そう何日もあるわけじゃないのに、一日一日がやたらと長く感じられて仕方なかった。


***

――そして今年最後の出勤日。

この日は三時くらいまで普通に作業したあと、工場の大掃除があった。

毎日作業後に掃除をしても、やはり汚くなるもので。
普段やらない場所や、目に届かないところを重点的に掃除する。

そして、いつも使っている機械を点検し、新しい油を差して袋を掛けた。

「一年経つのも早いもんだな」

「そうですね、あっという間でした」

東雲課長はマスクを掛け、埃をはたくパタパタを持ちながら、私に声を掛ける。
パタパタは汚れた形跡がなく、どうやら課長は掃除をしている体で、工場のあちこちを回っているみたいだった。


課長にそう言われ、しみじみと思う。

……本当にあっという間の一年だった。
でも、この一年も今までとなにも変わらないものだと思っていたのに。


――『ねえ、真壁さんってさ、彼氏とかいないの?』――


この言葉から、大きく私の人生は変わった。

面倒臭いと思っていた恋愛も、岡田さんのお陰で感じ方がぐるっと変わったし。
こんなに隣に人がいることが、居心地がいいなんて思ったこともなかった。

そして、これまで考えたことがなかった"結婚"という言葉で、私は今悩んでいる。

それはたった何ヶ月かのこと。
短い時の中でも、こんなにも自分の人生が変わるなんて。

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