現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
「……おごりなんですよね、おかわりください」

「い、いい飲みっぷりだね。オッケー」

岡田さんは少したじろいでいるようだが、そんなことは気にしない。
おごりだって言うし、無理矢理連れられてきたんだし、どうせだからしこたま飲んでやる。

大体、男だらけの工場で働いているから、周りは酒豪揃い。
飲めなきゃ工場の連中との飲み会なんてやっていられない。

カクテルで酔っちゃうような、なまっちょろい女じゃないんだよ、こっちは。

ちなみに大好きなのは、アイラ地方のスコッチウィスキーをストレートでちびちびやることだよ、このやろう。


……高くて早々買えないけど。


幸い明日は休み。腐るほど飲めるぞ。
どうせなら高いお酒をバンバン頼んでやる。

そんなことを思っていると、おかわりのビールと岡田さんが頼んだ料理がどんどんと運ばれてきた。


私はビール片手に、揚げたての唐揚げを頬張る。
口の中で肉汁がじゅわりと溢れ出て、しっかりと味が染み込んでいてとても美味しい。
そして、その後のビールはなおさら旨い。


やるなあ、この居酒屋。
めちゃくちゃ美味しいじゃないか。


「……さすがです、岡田さん」

「気に入ってくれた?この店」

「とても美味しいです。気に入りました。あ、おかわりください」

はは、と苦笑いしながら、岡田さんは個室の戸を開けて店主に声を掛けた。
その間も私は目の前の料理に食らいつく。

仮にも目の前の人はメーカーの社員さん。

仕事後の飲みとはいえ、こんなにこき使うのは失礼に当たるだろうが、彼のお望み通り一緒に食事をしているのだから、こき使っても文句はないだろう。


「お酒強いんだね、真壁さんって」

「そりゃあ、あの工場の中でお酒弱かったら仕事出来ないですよ」

「ああ、そうだね。言われてみれば、酒好きそうなおじさんばかりだもんな」


個室の戸が開き、ビールが運ばれてくる。
どうやら頼むペースが早いからか、ジョッキが三つ運ばれた。


「どうせ飲むでしょ?」

「良くお分かりで」

そう言うと、岡田さんは少し笑って胸ポケットから煙草を取り出した。

「吸っても差し支えない?」

「別に。私も吸うんで、たまにですけど」

「へえ、意外。じゃ、遠慮なく」


手慣れた手つきで煙草に火を付けると、すうっと吸って白い息を吐いた。


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