現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
階段の下から私を呼ぶ母の声に、私はハッと目を覚ます。

部屋はすでに真っ暗。
照明を付け、部屋の壁に掛けられた時計を見ると、時刻はすでに六時を回っている。

「うわ、本当に夕飯の時間まで寝落ちしちゃったよ」

慌てて茶の間へと行くと、すでにテーブルにはいっぱいの料理とお酒がスタンバイしていた。
正面一番奥には父が座っていて、いつから始めていたのか分からないが、もう顔を赤くしている。

「おお、お帰り里緒奈。先に飲んでたぞ」

「ただいま、父さん。いつから飲んでたの」

「だいたい四時過ぎだな。それでもあんまり飲んでないぞ?チビチビやってたんだ」

「……そのわりには顔赤くなってるけど」

いつもの定位置に座る。

母の言っていた通り、テーブルの上には私の好きなおかずが所狭しと置かれていた。
あまり食べてなかったからか、それを見た瞬間に、ぐうう、とお腹が鳴る。

「ほら、乾杯するぞ。さっさとグラスを持て」

父にそう急かされ、グラスを手に取りビールを注いでもらう。
そしてそのまま父のグラスに自分のグラスを軽く当て、口へと運んだ。

なにも入っていない胃に、アルコールが染み渡って熱を帯びた。

「仕事は相変わらず忙しいの?」

台所から新たな料理をお盆に乗せて、テーブルに無理矢理置きながら母が問う。

「うん、まあぼちぼちかな」

「そう。アンタもねえ、お父さんに似て機械いじりばっかりして、仕事まで男の人がやるようなところに就職しちゃうし、本当変わった子だねぇ」

「私にスカート穿いて事務作業なんて似合わないでしょ。想像してみなよ。その姿を」

「そうだな。想像できん」

「真に受けてマジで想像しないでよ父さん。……正直に言われると少しイラッとするわ」

父と話すとき、いつもこんな感じでツッコミを入れながら会話するのが定番だ。


和やかな食事の時間。

ホッとする空間が、疲れていた身体と心を優しく癒してくれる。
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