現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
「ところで里緒奈。誰かいい人でも出来た?」

唐突な母の言葉に、私は口の中に入れていた焼き鳥を、思わず噴き出しそうになってしまった。
ゴホゴホと咽ながら母を見ると、母はニコニコしながら私を見ている。

「な、なにを突然」

「え?いや、なんかね凄く前より女の子らしくなったように感じたから。前はこう、もっと色気がないというか、なんというか……。とにかく雰囲気が変わったように見えたのよ」

「うーん、そうか?俺には前と変わらんぞ?相変わらず親父臭い娘だがな」

「だからうるさいって父さん。……そう。変わったように感じるのか」

母はやっぱり鋭いなぁ。

昔っから私の変化によく気付く人だった。
ちょっとしたことで落ち込んでいても、すぐ「どうしたの?」って聞いてきてくれる、そんな人だった。

別に岡田さんと付き合ったからって、自分ではそんなに変わったつもりも、変わろうとしたつもりもなかったんだけど、母には分かるんだ。


……そういえば、課長にも似たようなこと言われたっけ。

やっぱり、知らない間に私自身が変わり始めているんだろうな。

「まあ、ぶっちゃけると……、彼氏出来たよ、最近」


そう父と母に話すと、父は持っていたグラスをテーブルに落とし、母は目を丸くして持っていたお盆を(なぜか)後ろにぶん投げた。

グラスはテーブルに置かれた皿に当たり、ガシャンと音を立て倒れ、中身がテーブルと置かれていた料理に染みる。
お盆は茶の間の襖にゴッと音を立て、下に落ちた。

「ちょ、ちょっとビール!ビールが料理に!!」

「お、おあああ!ゴメンやっちまった!!いや、だけどお前本当か!?」

「あらヤダ!!ビックリして投げちゃったわ!大変!!布巾持ってこないと!!」

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