正しい男の選び方
葉子が返事に困っていると、
「じゃ、このコーヒー豆も二パック貰おうかな」
と、注文を追加した。
「え?」
また葉子が戸惑っていると、こんどこそ浩平はニヤリとして
「コーヒー豆を切らしててどこで買ったらいいかわからなかったんだ」
と言った。
「……」
葉子は黙ってコーヒー豆を袋に詰める。全部用意ができると大きな荷物になった。
「え……と、全部で10万8000円になります」
「はい」
浩平はぽんと現金を差し出した。数えてみると一万円札が20枚ある。
「残りは、寄付しておいて」
「……そんな」
葉子が戸惑っていると、浩平は続けて言った。
「もう少しこの辺をブラブラしたいんだけど、買ったもの、預かってもらえないかなー?」
「はい、いいですけど……」
ここまでしてもらっておいて、まさかイヤとは言えなかった。
「助かる。じゃ、またね」
二人が言ってしまうと、政好が待ってましたとばかりにやってきた。
「……アイツ、結構鼻につく」
「え?」
「これみよがしに20万も出して、嫌みたらしくない? 女連れてチャラチャラしちゃってさ」
「……お金がありすぎて困ってるんだよ、きっと。とにかく、売れてよかったじゃない」
「……」
政好は無言になった。