正しい男の選び方

政好と葉子が手分けをしてTシャツとバッグを部屋の中に運び入れる。

政好は玄関先に荷物を置いた。
荷物を置いてしまえば、二人ともやることがなく手持ち無沙汰だった。

しばらく無言でいたが、最初に口を開いたのは政好だった。

「じゃ、うん、そろそろ帰ろうかな。今晩車も返さなきゃいけないし……」

「あ、そうだね。もう行ったほうがいいね」

「うん……じゃあ、おやすみ」

「おやすみなさい」

政好はドアをぱたんと閉めた。
葉子は、はあぁーと大きなため息をついた。最後に送ってもらってどっと疲れが出た。えらい気疲れする。

何で誘い入れなかったのかな……政好がそれを待っていたのは、葉子にもわかっていた。
でも、何となく気が進まなくて帰してしまった。

今晩はとにかく疲れたからゆっくり休みたい。
お風呂に入ろうかな、という時、キンコンカンコンとケータイからチャイムの音が鳴った。

電話だ。
それは浩平からだった。


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