正しい男の選び方

「もしもし」

「Tシャツとバッグのことなんだけど」

浩平はいきなり切り出した。

「持ってきてくれないかな、ウチまで」

電話をかけてきたと思ったら、挨拶もせずにいきなり持ってこい、との命令。
ちょっと自分が大金持ちのセレブで20万ポンと出せるからって、これは、傲慢というものではないだろうか。

「いきなり電話かけてきてその言い草はないんじゃない? 忘れちゃってゴメンとか、何か先に言うこと、あるんじゃない?」

浩平は電話の向こうであっはっはと大きな声で笑った。

「ごめん、悪かった。じゃ、持ってきてくれる?」

「嫌よ。重たくて持ち歩くの大変なんだから。欲しいんだったら、そっちが取りに来なさいよ」

「え、あ、そうか。わかった。じゃあ、住所教えて。今から取りにいくよ」

「え!? 今から?」

また急な展開に今度は葉子の方が大慌てである。

葉子は、もちろん持って行く気でいた。
浩平の部屋までというのはともかくとして、スーパーまで持っていって、そこで受け渡せばいいと思っていた。

だから、取りに来い、なんて行ったのは、モノのはずみで言っただけで、本当に取りに来させるつもりなどなかったのである。
が、浩平は畳み掛けるように訊いてくる。


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