正しい男の選び方
「どこ?」
「楓町2−3−15 サンコーポ203……」
「楓町か、世田谷だよね。15分ぐらいで着くと思う。それじゃ」
そのまま電話は切れた。
(浩平が来る、浩平が来る、浩平が来る……どうしよう、どうしよう、どうしよう……)
なぜだかよくわからないけど、テンパって部屋の中をうろうろしてしまう。
ざざっと片付けて、洗い物などしていると、ピンポーンとチャイムが鳴った。
ドアを開けると、浩平が、「こんばんは」と言いながら入って来た。
……隣りにカナを連れて。
浩平はさっと家の中を見回して玄関先にある荷物に視線を落とす。
「これ?」
「あ、うん。そこにあるので全部だから」
「カナ、半分持てる?」
「持てるよ」
二人で仲良く荷物を持つと、浩平はさらっとお礼を言った。
「ありがとね。夜、遅い時間に邪魔して悪かったな。じゃ」
それだけ言うと、二人はさっさと部屋を出て行った。
二人が出て行って、葉子は思わずその場にへなへなとへたり込む。
(ふぅー)
なんだか、心臓がローラーコースターにでも乗っていたような一日だった。