正しい男の選び方
この前は、浩平に追い立てられるように店に入ったから全然気づかなかったけれど、そこはおしゃれなカフェバーだった。
割りと今風のインダストリアルなテイストで統一されている。無骨なインテリアなのに、高い天井やれんがの壁にかけられたクラシカルな絵画がバーの雰囲気を洗練されたものにしていた。
いかにも浩平が好きそうな感じがする。
口紅をちょっと引き直しただけで、ヨロヨロの格好で来ていた葉子ははっきりと浮いていた。
だから店についた時、葉子は「しまった」と後悔の嵐だった。
大体、スーパーの店員である葉子の通勤服なんて超カジュアルだ。
普段からカジュアルなシャツにこれまたカジュアルなフレアースカートやチノパンがせいぜいだ。
葉子がどこかの一流企業のOLみたいにピシッとしたスーツなんて着たのは、就職活動の最終面接の時が最後である。
それが……今日は、Tシャツにジーンズという最低ランクの出で立ち。
しかも、Tシャツは、世に言う「キレイめ」Tシャツとかですらなく、秋祭りで販売していた、あの、葉子オリジナルデザインのエコTシャツである。……恥ずかしくて顔から火がでそうであった。
入り口で足をすくませていると、
「早く店に入りなよ」
と後ろから声をかけられた。