正しい男の選び方
驚いて振り向くと、浩平である。
「うわわわっ」
わけのわからない叫び声がつい出てしまった。
浩平もにやにや笑っている。
そのときやってきた席に案内する店員が、二人が一緒だと勘違いしたのも無理もなかった。
二人はお揃いのTシャツだったのである。
もう、葉子は恥ずかしくて恥ずかしくてたまらなかった。
何が恥ずかしいのかすらよくわからないが、一人でこのTシャツを着てこんな店に入るというのが恥ずかしくてたまらないのに、二人揃ってれば、恥ずかしさは3倍になる。
しかも、浩平とは別に一緒に食べに来たわけではないのだ。その上、浩平が堂々と入っていくので、恥ずかしさは5倍になる。
店内を見渡してみれば、すでに政好が席に座ってメニューを見ていた。
「あの、私、あっちだから」
「うん、じゃ、オレはこっち」
と、店の奥の影になっている方へ歩いて行った。
席に着いてからも葉子は落ち着かなかった。
浩平はどこらへんに座ってるんだろう…… 誰と一緒なのかな……カナなのかな?それとも新しい女?
4人で鉢合わせしたらどうしよう……
と浩平のことばかりに意識が行って、目の前の政好に全然集中ができない。
これだから嫌なんだ。
浩平が関わってきた途端に、いつも葉子はソワソワどきどきしなくてはならない。