正しい男の選び方

「君たちに会うなんて奇遇だな、って話してたんだ」

浩平が爽やかに話しかける。

「お揃いのTシャツまで着ちゃって、気が合うね、なんて冷やかしてたの」

と、これはカナが朗らかに続けた。

もう、葉子は今すぐにでも席を立って帰りたかった。
浩平は平気な顔でこっちに来るし、Tシャツのことをカナとネタにして笑うぐらいだし、

それに……カナはすごく綺麗だった。

もともとぞくっとするような魅力があるだけでもかなりハンディを感じるのに、銀色のてれてれ素材のノースリーブのシャツに白いパンツが決まっていて、おまけにヒールの高いすごくおしゃれなサンダルを履いている。

葉子だって、そこまでひどいはずはないのだが(と信じたい)、とにかく、今は全然勝負になっていなかった。

勝負って……別に、カナと争う必要なんてどこにもないのだが。

思わず「勝負」という言葉を浮かべる自分に苦笑いする葉子である。


< 110 / 267 >

この作品をシェア

pagetop