正しい男の選び方
「ねえ、せっかくだから一杯だけ乾杯しない?」
突如、カナが提案した。
「それは、悪いよ。デート中なんじゃない? ねえ?」
浩平が二人に同意を求めるように反論した。
「だから、一杯だけ、って言ってるんじゃない」
カナが上機嫌で浩平に言う。
「……じゃ、一杯だけどうですか」
政好が場をおさめるためにしぶしぶ言った。
カナが向いの席に座りながら、店員に素早く注文をすると、瞬く間にワインが一本とグラスが4つ運ばれて来た。
「乾杯しましょう?」
カナが陽気に声をあげ、他の三人が渋々従った。乾杯の後、カナが葉子の方をみた。
「ねえ、あなたたち、どうやって知り合ったの?」
葉子は、カナの射るような目つきに心臓が口から飛び出しそうになった。
カナは疑っている。
葉子が浩平と寝たのはあの時一回限りだったしあれは事故みたいなものだ。それに、浩平はあの時カナとは付き合ってなかったように思う……。
それに、今、葉子の隣りには政好だっているのだ。
大丈夫、ギリセーフで悪いことはしてないはず、
葉子は冷や汗をかきながら言い訳を試みる。
「スーパーの常連さんだったから、何となく知り合って……」
「ただの知り合いで、ケータイの番号なんて交換するかしら」
やっぱり疑ってる。